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環境と景観に配慮した次世代の空間づくり
(日刊建設工業新聞 平成14年12月13日)
千葉県印旛村は9月、北総・公団線の印旛日本医大駅コンコースで「印旛村野外芸術展 IN いには野 公開プレゼンテーション」を開催した。03年度に開園する千葉ニュータウンいには野地区・松虫姫公園に設置する野外モニュメントの制作者を選定するもので、大賞に彫刻家の鈴木典生氏が選ばれた。同芸術展は00年度から行われているアートコンペティションで、千葉県企業庁と都市基盤整備公団千葉ニュータウン事業本部が協力している。16人の作家が10分の1の模型でプレゼンテーションし、審査委員が審査する。それを駅コンコースで公開するという画期的な試みだった。この企画・運営に携わってきたアートファクトリー玄の新社長に34歳の杉村総一郎氏が就任した。来年創立30周年を迎える同社は、環境保護をテーマに環境と景観に配慮した次世代の空間創造をめざしている。

高機能ゴミ入れ「コレクタ」が契機

1971年、市街地でのゴミ問題が環境問題化しはじめたころ、野村総合研究所は観光地、霧ケ峰高原を中心に空き缶投棄の実態調査と回収実験を2年間行った。その時、<あつめ捨て>マークをつけたゴミかごの試作品がつくられる。
それが環境保護を目的とした高機能ゴミ入れ「コレクタ」で、これを契機にアートファクトリー玄の前身である日本環境機材が設立される。同社はその後ニッカンに社名変更し、シンボルモニュメント事業を担当するアートファクトリー玄事業部を発足させ、その事業部を分離独立させて現在のアートファクトリー玄を設立する。一方のニッカンはパブリックアート研究所に社名変更し、街づくり事業を担当。両社で環境と景観の事業展開を積極的に展開している。

アートファクトリー玄
代表取締役 杉村総一郎

リサイクル回収ボックス、実績30年シェア70%

同社のゴミ資源リサイクル回収ボックスは、30年の歴史と実績がある。いまどこでも見かけるそれらは、自販機サイドや公共空間でシェア70%を占める同社の製品である。しかし回収ボックスだけでは限界があるということで、現在はISO14001取得企業向けに、廃棄物の第1次分別回収を目的としたコンサル業務を展開している。

「オリジナル製品では、ラインナップを増やしてもコストの安さという方向にいってしまい付加価値を生みません。そこで企業から出る廃棄物を分析し、分別することのコンサルを行っています。情報をクライアントに的確にサービスしていくことで、購買機能を私たちが企業の代理店として行うことです。リサイクルも含め、製品を供給し使ってもらうのに付加価値としてなにが有効かを考えていくことです」

「たとえばコンビニエンスストアや流通業界から引き合いがきていますが、その特徴は、特定のモノをリサイクルを目的に回収したいという特注品が多くなったことです。コンビニの入り口わきにリサイクルボックスを置くなんて20年前は考えられなかったことですが、最近ではそのように裏方にあったものが表に出てきています。そこで重視されるのが、分別機能を持った高いデザイン性です」

「そして少子化による若い人たちの減少や景気の動向を考えると、リサイクルはデジタル化に伴って機械化が進みシンプル化していきます。しかしリサイクルボックスに対して多くの人たちが持っているイメージは、旧態の<ゴミ箱>という環境への無関心さです。環境を考え良くするにはリサイクルの入口であるリサイクルボックスがよくなければなりません。だからリサイクルボックスの市民権を得たいのです。環境をよくすることは人間生活にとって大切なことですが、その意識はまだ十分でありません」

人間の本質にかかわるアイデンティティーを持つこと

「私はパブリックアート研究所にもいて、景観事業にもかかわってきました。パブリックな場に彫刻(アート)を設置し、アートの価値を最大限に引き出し付加価値をつけて活用することで、空間の存在意義を高めることです。今回の公開審査もそうしたことの一環です」

「環境も景観も同じですが、全般的にいえるのは日本人としてのアイデンティティーが欠けていることです。すでにヨーロッパのブランドメーカーは、独自のアイデンティティーをつくりはじめていますが、日本はまだブランド志向です。アートはアナログなのです。うわべでなく人間の本質的な、内面的なものにかかわることです。その意味でもう一度、日本文化を見直さなくてはなりません」

「わが社は環境保護という観点からリサイクルボックスを専門に考えている数少ない企業ですから、そうしたところに一石を投じたいし、そうしないとダメだという危機感があります。そうした状況にきちんと対応できれば、優れた空間がつくれます。それにはモノづくりの本質が分っていないといけません。優れた人たちとコラボレーションしながら、そのことへの提案を積極的にやっていきたいと考えています」。


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