童謡「赤い靴」の少女のモデルとして、東京都港区麻布十番の商店街に「きみちゃん」像が建てられてから17年余り。建てられた当日、誰かが像の足元に小銭を置いたことが呼び水となり、その総額がついに1000万円になった。
“浄財”を回収し、国連児童基金(ユニセフ)などに贈ってきた近くの洋品店店主、山本仁寿さん(64)は「ほとんどが1円玉や5円玉。小さな善意も積み重なれば大きな力になるのですね」と話す。
〈赤い靴はいてた女の子 異人さんにつれられて行っちゃった〉の歌詞の女の子は、1902年に静岡県で生まれた岩崎きみちゃんとされる。定説によると、きみちゃんが3歳の時、母親のかよさんが北海道の農場開拓へ。その際、幼い娘が厳しい環境に耐えられるかどうかと案じたかよさんは、きみちゃんを養女として米国人宣教師に託した。
かよさんは、娘が米国で幸せに暮らしていると信じていたが、実際には、きみちゃんは渡米直前に結核を発病。麻布十番にあった教会の孤児院に引き取られ、9歳で亡くなった。「赤い靴」の詩は、北海道でかよさんと知り合った野口雨情が21年に書いた。
麻布十番商店街が、ブロンズと石でできた高さ60センチ(台座70センチ)の像を建てたのは、89年2月28日。その日の夕方、山本さんが店の前の像を見に出たところ、足元に18円が置いてあるのを見つけた。
“寄付”はその後も続き、月々数万円が集まった。途中からお金を入れる箱を置くようになり、世界の恵まれない子どもたちの力になればと、年度末にまとめてユニセフに贈ってきた。時折、大口の寄付もあり、今年3月末には計約995万円となったため、山本さんや商店街振興組合のメンバーらが上乗せして、大台を突破させた。ユニセフ以外にも、阪神大震災やインド洋津波の際に義援金として贈ったという。