東京麻布十番に立つ野口雨情作詞の童謡「赤い靴」のモデルの少女とされる「きみちゃん」の像に、赤いマフラーが巻かれている。高さ約60センチの像に合わせて編んだかのような小さなマフラーだ。だれが編み、きみちゃんの首に巻いたのかわかっていない。
麻布十番商店街振興組合の元副理事長で、像の目の前で紳士洋品店を営む山本仁寿(きみとし)さん(65)が、マフラーに気付いたのは10日ほど前。朝、店の6階の自宅の窓を見下ろしたとき、赤いものが付いているのに気付いた。いたずらかと確かめに行くと、マフラーだった。
像のある広場は交差点の真ん中にある。マフラーに気付いた通行人は、足を止めて眺めたり触ったり。「マフラーが取れかかっていたのに、翌朝巻き直してあったこともあった」と山本さん。これまでも夏に帽子がかぶせてあったこともあるという。山本さんは言う。「気持ちがうれしいよね」
「赤い靴」の歌詞から、親子一緒に暮らせることの意味を考えてみたい−そんな思いで89年、山本さんらが中心となり商店街で像を設置。完成した日の夕方、像の足元にだれかが置いた18円から始まった募金活動は今も続く。毎年ユニセフに寄付を続け、昨年1千万円を達成した。