近年、パブリックアートを設置するプロジェクトが増加してきている。ところが、アートとアートが設置された空間との間に良好な関係が存在しないケースが多いのも事実。そこでは、アートも空間も死んでしまっている。
こうしたなかで、アートファクトリー玄は「プロジェクトが具体化する前の段階で、クライアントや設計者らとともにまちづくり・空間づくりについての共通の“物差し”をつくるように心がけている。そこでは、地域性などにまで踏み込んでキャッチボールする。そのうえで、その“物差し”を具現化してもらうのにもっとも、ふさわしいアーチストを私たちがもつリストから選定、創作を依頼する。設計者、アーチスト、私たちが同じ立場でまちづくりに参加していくという姿勢」(杉村総一郎景観事業部マネージャー※当時)でアートの企画、設計、製作、設置、運営事業を展開している。
空間や図面を読み込み、提案もできるようにと、一級建築士事務所の登録もしている。玄がプロデューサー的役割を果たし、そこで設置されたアートと空間の問には濃密な関係が形成される。また、これは「まちづくり、景観づくりでアーチストが機能できるという仕掛けにもなる」という。
アーチストの選定は、600人のアーチストデータをもっており、その中から、“物差し”を具現化できる作風をもったアーチストを選定する。阪神大震災の影響もあり、近年は、作風だけでなく設置の仕方や構造、メンテナンスなどハード面での要請も強くなってい
るという。このため、保守・管理ではPL法の保険にも加入、1年間は責任を持つようにしている。
「プロデューサーがもっと出てきてもいいと思う。ただし、設計と“闘う”つもりはない。設計が考える空間にいかに融合させていけるかが、プロジェクトを成功させる秘訣だと思う」と語る。
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